知財情報:商標の類否判断の基準は?
商標の調査は、特許庁のデータベース(特許情報プラットフォーム|J-PlatPat [JPP] (inpit.go.jp))を活用すれば、誰でも調査できるようになりました。
しかし調査で難しいのは、ヒットした先行登録例と自分の出願したい商標が類似なのか、否かですね。
一字違いは「類似」と判断され商標法4条1項11号に該当する可能性が高いので、これから使用を開始する商標であれば、違う候補を検討することをおすすめいたします。
では、下記の例は類似でしょうか。非類似でしょうか。
下記の例はいずれも、「非類似(似ていない)」と判断された例になります。
デザイン(図案化)された文字であるなど、先行登録商標との違いがいえれば、登録されるケースがありますので、類否判断は、奥深いものがあります。
不服2017-10420
審決要旨(一部抜粋)
本願商標と引用商標2を比較すると、・・・その外観は明らかに相違するものであるから、両商標は、外観上、判然と区別できるものである。
次に、称呼においては、本願商標からは、特定の称呼は生じないものであるから、両商標は、称呼上、比較することができないものである。
さらに、観念においては、本願商標及び引用商標2は、ともに特定の観念を生じないものであるから、両商標は、観念上、比較することができないものである。
そうすると、本願商標と引用商標2は、外観において、判然と区別できるものであって、称呼及び観念において比較することができないから、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標である。

BOB(標準文字)
不服2009-12230
審決要旨(一部抜粋)
本願商標は、・・・太線で表してなる「FL」の欧文字と、その右方に、該欧文字の縦線部と同じ太さ及び高さからなる2本の太線を等間隔に配し、さらに、その太線のうち、左側に位置するものの上方には、やや間隔を空けて、左辺部を底辺とする三角形状の切り欠きを設けてなる横長矩形(該矩形の横幅は、下方に位置する該太線の横幅に揃えてある。)を配し、同じく、右方に位置するものには、その上方であって、該矩形と同じ高さの位置を始点とし、下方に位置する該太線の右側中点を終点とする、弧状に表してなる矢印線を配してなるものである。
してみれば、本願商標は、看者をして、容易に特定の文字列を表したものと理解、認識されるとはいい難く、むしろその構成全体から特定の称呼及び観念を生ずることのない文字と図形との組合せからなる一体的な標章として看取されるというのが相当である。
他方、引用商標は、「FLIP」の欧文字を横書きしてなるものであるところ、該欧文字は、「フリップ」の読み及び「・・・をひょいと動かす。・・・をつめ[指]ではじく。」の意味を有する英語「flip」を大文字で表したものとして認識されるものであるから、その構成文字に相応する「フリップ」の称呼を生じ、その意味に即する観念を生ずるものである。
そこで、本願商標と引用商標との類否について検討するに、上記のとおり、両商標は、外観において明らかに相違するものであり、また、本願商標は、特定の称呼及び観念を生ずることのないものであるから、称呼及び観念において引用商標と比較することはできない。

FLIP
不服2015-19500
審決要旨(一部抜粋)
本願商標は、・・・「OSG」の欧文字をゴシック体で横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して「オーエスジー」の称呼を生ずるものであり、また、該文字が特定の意味合いを有しないものであるから、直ちに特定の観念を生じないものである。
他方、引用商標1は、・・・2つの円形図形の間に右肩上がりの曲線図形を配してなるところ、その構成は、商標全体を水平に通る白抜き線により、6つの円弧及び直線を巧みにバランスよく組み合わせた印象を与えるとともに、中央に表された2つの円弧からなる曲線の両端が、白抜き線を有する左右の円形図形に接するように表されていることから、たとえ、「O」、「S」及び「G」の欧文字をモチーフに図案化されたものであるとしても、その図案化の程度からすると、これより直ちに、特定の文字を表したものと認識させるともいい難いから、特定の称呼及び観念は生じないというのが相当である。


不服2014-4545
審決要旨(一部抜粋)
本願商標は、・・・「KATANA」の欧文字を標準文字で表してなるところ、該文字に相応して「カタナ」の称呼を生じ、「刀」の観念を生じるものと容易に認識されるものである。
一方、引用商標は、・・・欧文字6文字とおぼしき文字を表してなるところ、近時、文字のデザイン化が進んでいるとはいえ、引用商標を構成する各文字は、かなりデザイン化され、それでも語頭から4文字目までが「K」「A」「T」「A」及び6文字目が「A」を表現したものと認識されるものの、5文字目は、前後で認定した「A」との比較でその態様が異なることから、「A」と特定し難く、また、これを小文字の「n」と認定することも他の文字が大文字であることから不自然さが残るものである。
また、職権をもって調査するも、引用商標の5文字目が「N」を表したものと認識されるとする理由も見いだせない。
そうとすれば、引用商標は、全体として特定の称呼及び観念が生じないとみるのが相当である。
KATANA(標準文字)
